こんにちは。体で感じる解剖学、講師の稲田です。
前回、ムーブメント界におけるパラダイムシフトについて書きましたが、実は痛みの医療においてもパラダイムシフトが起こっているのを知っていますか?
人が感じる「痛み」という感覚は、非常に複雑なんですよね。
足を何かにぶつけて腫れて痛いというなら、単純に組織の炎症が痛みの原因だとすぐわかりますね。
傷が治癒すれば痛みも消えていきます。
ところが、痛いんだけれど場所をはっきり特定できない痛みというのがあります。
腰痛にせよ、膝痛にせよ、肩の痛みにせよ、外傷が原因でないものは基本的には代償作用による「機能の変化」が痛みを発現させる元になっているんです。
機能の変化とは、運動機能の場合もあるし内臓機能の場合もありますね。
ところが、痛みを訴えて病院へかかると、まず最初に検査されるのがレントゲン撮影での骨の異常の有無です。
骨に異常がなければ、今度は靭帯や椎間板などの軟部組織の状態がわかるMRIの検査を受けます。
ここで、運悪く構造的な問題が見つかれば、痛みの犯人逮捕となるわけですね。
非常によくあるパターンが、座骨神経痛の犯人が椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄だったり、膝の痛みの犯人が軟骨のすり減りや半月板の損傷だったりという誤認逮捕ですね。
じぇじぇじぇ~!、ヘルニアがあっがらいでんでねーの、軟骨が当たっがらいでんだべー
そうですよね。
でもちょっと考えてみてください。
椎間板ヘルニアはなんで起こったんでしょうか?
不快な刺激が生じたことで、体に代償的な動きが生まれ、それが元で機能の変化が起こり、その結果として構造や形態の変化が起こったわけですよね。
それに、健常者であっても椎間板ヘルニアや脊椎の異常を持っている人はかなりの確率でいるわけです。
地震は地殻のプレートがずれるために起こるということは今は常識です。
つまり、構造の変化が痛みの原因というのは、地震起こすのはなまずちゃんだと言っているのと同じなんですよね。
ほんとうに因果関係があるのは、機能が変化したことなんです。
だから、「痛み」の医療は構造的なアプローチから機能的なアプローチにパラダイムシフトしていかないと、痛み医療の出口がなかなか見えてこないことになります。
ただし、機能の変化だとわかったとしても、これまたさまざまな要因が絡んでくるわけですよ。
・筋・関節の問題
・姿勢などの体の使い方
・栄養の問題
・内臓機能
・リンパの停滞
・心の問題
などなどの絡みを紐解いていくには、必要な治療手段をいくつか組み合わせていろんな角度からアプローチしていかないといけません。
僕自身もすべてのことに対応できる術は持ち合わせていないですが、少しずつ引き出しを多くしていけるようまだまだ勉強中です。(・ω・)/
機能の変化の中で、間違った運動パターンによる体の使い方の問題については、自分自身が脳の間違ったプログラミングを書き換えないといけないので、エクササイズが必要になります。
その前提になるのが、本来体はどのように動くように出来ているかを知ることですね。
そして、機能の体現を通して、間違った代償性の動きが改善できれば、構造の変化によって摩耗することも避けることができるんじゃないでしょうか。
お読みいただきありがとうございました。